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🔴本「かがみの孤城」/辻村深月(ポプラ社)*2018本屋大賞ノミネート作品その6*レビュー4.5点

かがみの孤城

かがみの孤城

【今年№1⁉堂々のイチオシ小説】

2018本屋大賞ノミネート作のうち6作を読んでみました。……で、私が書店員だったら、間違いなくこの『かがみの孤城』に一票を投じます。あと4作残してはいますが、“もうこれで決まり、これにしましょうよ”という感じです。ということで、ノミネート作の読み比べはこれで打ち止めにしたいと思います(この作品に出会えただけで十分満足です)。

ちなみに、読んだ6作のオススメ順位は①「かがみの孤城」、②「崩れる脳を抱きしめて」、③「屍人荘の殺人」、④「百貨の魔法」、⑤「キラキラ共和国」、⑥「たゆたえども沈まず」ってトコでしょうか。まあ、好みの問題ではありますが……。

【あらすじ】

クラスの女子との関係がこじれて不登校になった中学1年生のこころ。ある日部屋の鏡が光り輝いているのを見て手を伸ばすと、たちまち鏡の中に吸い込まれ、見知らぬ城のある風景に放り出される。城の中には、こころと同世代の男の子が4人、女の子が2人、そしてアンティークな衣装を身にまとい、狼の仮面をつけた“オオカミさま”と名乗る少女がいた。

オオカミさまは、混乱する7人の中学生に向かって、「この城には願いを一つだけ叶えてくれる“願いの部屋”がある。その部屋の鍵を探せ。ただし、願いが叶うのは一人だけ」と告げる。

一体ここはどこなのか、なぜ自分が招待されたのか、オオカミさまとは何者なのか……何も分からないまま、彼らはそれからたびたび城を訪れるようになり、少しずつ打ち解けていく……。オオカミさまが告げた閉城の期限は翌年の3月30日。果たして彼らは鍵を見つけることができるのか……。

【感想・レビュー】

少女の心の悲鳴が聞こえてくるようなモノローグ、生々しい痛みを伴った現実と希望の光がのぞく鏡の中の世界とが渾然一体となった中盤、そして全ての謎が氷解し、圧倒的感動に包まれるエピローグ……いやあ、参りました。これは本当に見事な作品です。

一言でいえば、“愛おしい小説”。読後は、ふくよかな余韻に満たされて、本をそっと抱きしめたくなる、そんな小説です。

前半は、ダークファンタジーの世界(なんだかスペイン映画『パンズ・ラビリンス』を思い出します)。出口のない闇の中で必死にもがいている少年少女の心の葛藤に、正直、息苦しささえ感じます。しかし、中盤以降は、仲間と心を通わせることで少しずつ強くなっていく彼らの姿に励まされます。“大丈夫だよ”って言葉はこんなにも心強いものなのですね。周りにそんな言葉を言ってくれる人がいるだけで、人は十分幸せなのかもしれません。そして馥郁たる春の香りが漂うラスト……もう何も言うことはありません。

この7人の少年少女の誰かに幼かった頃の自分を重ね合わせて、“大丈夫だよ”、“負けないで”と声掛けしながら読んだという心優しき読者も決して少なくないと思います。自分が彼らを励ますように、どこかで誰かが自分のことを励ましてくれているのだとしたら……ちょっぴり勇気が湧いてきますね。

過去の本屋大賞受賞作の中では『博士の愛した数式/小川洋子』と『夜のピクニック/恩田陸』が双璧、と密かに思っていたのですが、これはその二作に引けを取らない名作だと思います。