お気楽CINEMA&BOOK天国♪

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🔵シラノ・ド・ベルジュラック/(1990フランス)4.2点

シラノ・ド・ベルジュラック ジェラール・ドパルデュー  Blu-ray

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【恋に殉じた男の苦悩と矜持】

 “男らしさとはなにか”と問われたら、私は即座に“痩せ我慢”と答えます。そのココロは……この映画を観ていただけたら分かります。

……しかし、痩せ我慢の人生なんて、ハタから見ている分にはカッコいいかもしれませんが、当の本人にしてみたら、切ないものですね……(溜息)。

【あらすじ・感想・レビュー】

シラノ・ド・ベルジュラックは17世紀のフランスに実在した詩人、剣客、哲学者。

男としてあり余る才能に恵まれたシラノの唯一にして最大の弱点は、その巨大な鼻。彼は従姉妹のロクサーヌに恋をするが、そのコンプレックスのために彼女に想いを告げられず、逆に彼女の方から美男のクリスチャンへの恋の悩みを相談される始末。シラノは、ロクサーヌへの想いを封印し、恋敵である(無学の)クリスチャンのために、美しい恋文を代筆して二人の仲を取り持とうとするが……。

いかにもフランスらしい、粋で華のある恋愛映画。“恋に殉じる男”を描いた永遠の愛の物語です。

長尺ですが、決闘あり、ロマンスあり、戦争ありの波瀾万丈の活劇仕立てなので、 見どころも多く、それほど間延びした印象はありません。

自らの想いを封印し、ロクサーヌとクリスチャンの恋を成就させるために命懸けで奔走したシラノ。その犠牲的精神を、“負け犬根性”と捉えるか“心意気”と捉えるかで、この映画に対する評価も多少変わってくるかと思います。しかし、どちらにしても、この映画が描いているのは“敗者の美学”。『フーテンの寅さん』好きの日本人には受け入れやすいのかなという気がします……ただ、中には、この映画のシラノがカッコよすぎて嘘くさい、と感じる向きもあるかもしれません。確かに、もう少しブ男の苦悩を具体的なエピソードを交えて描いた方が良かったかなとは思います。

まあ、多少の不満はありますが、シラノを演じるジェラール・ドパルデューの台詞回しは圧巻の一言です。特に印象的なのは、バルコニーに立ったロクサーヌに、夜陰に紛れクリスチャンに扮したシラノが囁く美しい口説き文句。詩的な言葉が湧き水のようにこんこんと溢れ出て、ホントにロマンチックです。

また、ロクサーヌを演じたアンヌ・ブロシェも、肖像画の貴婦人のようにエレガントで、スレンダーな立ち姿にうっとりします(シラノが代筆した恋文を読んで失神してしまうシーンは笑ってしまいますが)。

しかし、フランスって、やっぱり芸術の国ですね。上流階級から一般庶民に至るまで、古くから(演劇、詩、小説等の)芸術を愛し、芸術家を貴ぶ伝統があって、そういう精神が国民に深く根を張っているような気がします。フランス人が母国語を愛し、誇りを持つ気持ちもよく分かります。