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🔴落ちぬ椿/知野みさき(光文社時代小説文庫)4.2点

落ちぬ椿: 上絵師 律の似面絵帖 (光文社時代小説文庫)

落ちぬ椿: 上絵師 律の似面絵帖 (光文社時代小説文庫)

【恋に仕事に一途な女職人シリーズの開幕】

『上絵師 律の似面絵帖』シリーズの第一作。作者はミネソタ大卒、バングーバー在住とか。そんなキャリアの人が、なんで時代小説なんでしょう。そのギャップに惹かれて読んでみましたが、作品自体は、王道の時代小説。下町の人情が心に沁みる、日本人の感性にぴったりの物語です。

どんな経緯でこのジャンルをチョイスしたのか、作者の人となりを含め興味を惹かれます。

【あらすじ・感想・レビュー】

両親に先立たれ、神田相生町の裏長屋で幼い弟と二人ほそぼそと暮らしながら、上絵師としての独り立ちを目指す女職人、律。この作品は、律が副業として請け負った似面絵が様々な事件を解決していく様や、律と幼馴染涼太との身分違いの恋、律と周囲の人たちとの心の交流などを描いた、情感たっぷりの下町人情小説です。

娯楽小説にしろ文芸小説にしろ、良い小説の条件は“人をどれだけ(深く)描けているか”だと思うのですが、その意味で、この作品は水準以上だと思います。

登場人物一人ひとりのキャラクター(人物造形)がカッチリしていてブレがないので、違和感なく物語に入り込めるし、感情移入も容易です。その上、各々が人間的魅力に溢れ、人情の機微も細やかに写し取っているので、読んでいて心地好く、特に彼らの幼子に向ける温かな眼差しなどはうるうるしっ放しです(イチオシは律。一途で健気なところがたまりません)。

この作品、捕物帖としても楽しめるのですが、好きなポイントは、やっぱり律と涼太の恋の成り行きでしょうか。身分違いの恋に悩み、行きつ戻りつする律の想いがいじらしくて、つい、いつまでも煮えきらない涼太をどやしつけたくなってしまいます。結局、第一巻では、じれったいままで終わっているので、また近いうちに書店に足を運ぶことになりそうです(それでバットエンドだったら、バンクーバーまで抗議の電話を入れるかもw)。

それにしても、昔の女性は22、23歳で年増扱いですか。びっくりします。当時の平均寿命が極端に短かったことも関係してるのかもしれませんね(もっとも、平均寿命の最大の下げ要因は、新生児の死亡率の高さらしいのですが)。確かに“人生50年”だったら、10代での結婚もおかしくないような気がします。短命で早婚の昔と長寿で晩婚の今……人の営みって変なところでバランスが取れてるんですね。