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🔴烏に単は似合わない/阿部智里(文春文庫)3.8点

烏に単は似合わない? 八咫烏シリーズ 1 (文春文庫)

烏に単は似合わない? 八咫烏シリーズ 1 (文春文庫)

【気鋭の新人が描くパラレルワールド】

これって、ファンタジー?ミステリー?それとも王朝ロマン?……よく分かりませんが、まあ、人が烏に変身できることを除けば、ミステリアスな王朝ロマンってトコでしょうか。

それにしても、こんな世界観、どこから浮かんでくるのやら。この作家の物語の構築力や創造性は大したものだと思います。タイトルもなかなか意味深です。

【あらすじ・感想・レビュー】

舞台は、八咫烏の一族が支配する「山内」の地。宗家の世継ぎである若宮のお后選びに名乗りを上げた分家の4大貴族の姫君たちの、后の座を巡る熾烈な競争と、その意外な顛末を描いた物語。

デビュー作らしく荒削りな部分はあるものの、物語の構想力や創造性が卓抜で、勢いのある作品だと思います。

序盤、中盤は、絢爛豪華な王朝絵巻。いずれ劣らぬ美女たちの大奥バリの熾烈なバトルやお約束の宮廷内の権謀術数にはちょっと引いてしまいますが、4人の姫君の美貌やそれぞれの想い、館の典雅な趣きやゴージャスな衣装などの描写が鮮やかで、この辺りまでは誰が后に選ばれるのか興味津々です。

ところが、終盤に入って(待望の若宮が登場するやいなや)ストーリーは急展開、読者は、夢のパラレルワールドから一気に現実の世界へと引き戻されてしまいます(物語の様相もファンタジー調からミステリー調へと一変します)。その落差が衝撃的なのでテンションだだ下がりですが、まあ、これもビターなお伽噺、しばし夢の世界で楽しめたので、結果オーライの範囲かもしれません。この読後感を例えるとしたら……「ボッタクリの店だったけど、キレイなおねえさんたちにモテモテだったから、まぁ、しょうがねっかー」って感じ?はたまた「イケメン(又は美女)の結婚詐欺師に騙されたけど、いい夢みさせてもらったから、まぁ、いっかー」って感じ?でしょうか(ちょっと違うような気もするけど……)。

しかし、この作家、同性にかなりシビアですね。女性の本質を書き尽くしてるというか、容赦なく晒してるというか……ちょっとオッサンのロマンが壊れてしまいました(逆に女性の読者なら溜飲が下がるかも?)。

この作品、独創的でエンタメ性もあって、最後まで面白く読めたのですが、結論を急ぎ過ぎたのか、若宮のキャラがいまいちピンとこなかった(そのため彼が選んだ后にもあまり共感できなかった)のが惜しいところかなと思います。もっとも、その点は次作『烏は主を選ばない』で明らかになるとは思うのですが。