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🔴ハガキ職人タカギ!/風カオル(小学館文庫)3.7点

ハガキ職人タカギ! (小学館文庫)

ハガキ職人タカギ! (小学館文庫)

【新しい趣向の古典的青春小説】

なるほど、『ハガキ職人』って、ラジオの深夜放送番組の投稿オタクのことだったんですね(「オタク」ってコトバはあまり好きじゃないんですが、他に適当な言い方が思い浮かばないので)。そういうことなら、高校時代、深夜放送を聴きながら受験勉強をしていた、元祖“ながら族”(昔、そういうコトバがありました)の身としては、シンパシーは感じても、違和感は全くありません(世代を超えた友情!)。

この作品、コトバやネタは今風で目新しいのですが、中身は、ある意味、普遍的な青春小説なので、老若男女、誰にでも楽しめる作品かなと思います。

【あらすじ・感想・レビュー】

ラジオの深夜放送番組の投稿オタク、タカギのペンネームは、ガルウィング骨折!「翼の折れたエンジェル」のモジリと分かって、思わず笑ってしまいます。そんな作者のギャグセンスが炸裂するのは、ギャグ自慢のハガキ職人が集う大喜利風ハガキ職人ライブの場面です。各々が繰り出す爆笑ネタに、唸ったり、ドン引きしたり、仰け反ったり、吹き出したりと、その斬新でユニークな発想に驚かされます。ナンセンス系ギャグが好きな人なら、一読の価値はあるかと思います。

ただ、この作品、ストーリーは意外と?オーソドックス、ベースはあくまで王道の青春小説です。

タカギの、投稿に対する情熱や葛藤、同級生女子の榊さんに対する恋とも友情ともつかぬ複雑な想い、イケメン同級生に対する屈折した対抗心、ライバルのハガキ職人に対する露骨な敵愾心……などなど、年頃の男の子のナイーブな感情がイマドキのコトバでユーモラスに語られ、退屈することはありません。

ただ、あえて言わせてもらえれば、そうした若者の焦燥感や無力感、尖った感情や屈折した想いなどは、これまでの小説で既に語り尽くされた感があって、読んでいて何となく既視感を感じてしまうのも事実です。その意味で、この作品は、良く言えは、新しい趣向の古典的青春小説、悪く言えば、どこかで読んだような、よくある青春小説と言えるかと思います。

そして、この作品がそうしたベタな印象を残す一因は、タカギの人物造形(キャラ設定)にもあるように思います。何となく中途半端な印象があって、あまり魅力を感じないのです。榊さんは着実に成長しているのに、タカギはそれほど成長しているようには見えません。タカギの榊さんへの想いも、ずっとふらふらしてどっちつかずのままです。まあ、等身大といえば等身大なのでしょうが、そうしたタカギのキャラの弱さが、この作品の魅力を減殺し、(私の)共感を妨げているような気がします。 

……もっとも、思春期の男の子なんて、みんな似たりよったり(幼稚で愚かで自意識過剰?)ですから、その前提で新しい青年像を創造するとなると、かなりハードルは高いのかなとは思います。

……タカギを腐してしまったので(男に厳しいとよく言われます)、最後に一言。

榊さんは存在感があります。普段はおとなしくて、目立たない子なのに、いざ話してみると、繊細で、賢くて、意外と面白いことを言ったりして……そんなタイプの女の子です。確かクラスにこんな子いたよなあ、というリアリティがあって、妙にシンパシーを感じます。で、次回はぜひ榊さんを主人公にした物語を書いてもらえたらなあと思っています(女に甘いとよく言われます)。