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🔴群青のとき/今井絵美子(角川文庫)4.1点

群青のとき (角川文庫)

群青のとき (角川文庫)

【混迷の現代にも通じる物語】

幕末の動乱期、日本を開国へと導いた老中阿部正弘の熱き人生を描いた本格歴史小説。

【あらすじ】

代々幕府の老中職を輩出している名家(福山藩主)に生まれた阿部正弘は、幼い頃から将来を嘱望され、25歳で待望の老中職に就く。

しかし、彼を待ち受けていたのは、幕府の財政の逼迫、欧米列強の開国要求、攘夷派の台頭等、内政・外交上の様々な難題だった。

彼は、日本を守るという一念で、欧米列強の圧力をかわしつつ、水戸藩主水戸斉昭らの攘夷派を抑え込みながら、一歩一歩開国への道筋をつけていく……。

【感想・レビュー】

NHKの大河ドラマにぴったりという感じのスケール感のある一代記。幕末史の中では地味で目立たない存在の阿部正弘だが、彼がいかに優れた政治家であったか、歴史にどれだけ多くの功績を残したかがよく理解できる一作。

とりわけ、幕藩体制が危機に瀕する中、新しい時代を切り拓くために積極的に有能な人材を登用し、国益を最優先して開国を決断した、その視野の広さと先見性は瞠目に値する。

あの(情報の乏しい)時代に、日本と欧米列強との国力の違いを冷静に見極めた上、国防の観点から、開国を受容して速やかに自衛のための戦力を整えるべしとする彼の現実的な思考は、彼がいかに有能な実務家だったかを端的に示すもので、多数派である攘夷論者を硬軟織り交ぜて懐柔していく類稀れな調整力と併せて、大いに評価されるべきだろう。

本作が史実と多少異なる部分はあるとしても(例えば彼の分身たる“闇丸”を創作している点など)、少なくとも、あの時代に阿部正弘の登場がなかったら、幕末史の様相はかなり変わっていたに違いない(もしかしたら明治維新以前に日本は植民地化されていたかもしれない)。その意味で、ペリー来航の際に彼が老中首座であったという歴史の偶然をわれわれは大いに感謝すべきだろう。そして、こんな政治家が今の日本にいてくれたら、と思わずにいられない。

……それにしても、日本とアメリカの(力)関係は、ペリーの来航から160年以上経った今でも、ほとんど変わっていないように思われる。阿部正弘ほか、本作に登場した、島津斉彬、勝海舟、吉田松陰らの面々が今の日本を見たとき、一体何を思うのか、知りたいところではある。