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🔴55歳からのハローライフ/村上龍(幻冬舎文庫)3.9点

 

55歳からのハローライフ (幻冬舎文庫)

55歳からのハローライフ (幻冬舎文庫)

【男は過去に囚われ、女は今を生きる】

格差社会のシビアな現実の中で、人生の再出発を果たそうとする中高年の苦闘を描いた中編5作を収録した作品集。

【感想・レビュー】

孤独、貧困、夫婦の不和、体力の衰え、老いらくの恋など、中高年の直面する現実がリアルに描かれ、身につまされるが、どの作品も再出発の予感を感じてさせて、読後感は悪くない。

《結婚相談所》

定年退職した夫との息苦しい生活に耐えられず、離婚に踏み切った志津子は、経済的困難から結婚相談所に通う。一方、夫は離婚を後悔し、彼女とよりをもどそうとする……。

しなやかでしたたかで潔い女と独りよがりで未練タラタラでひ弱な男。そのコントラストが面白い。男は過去に囚われ、女は今を生きる、ということか。

「一人で生きていく」という志津子の決心を後押しする『ひまわり』の映画評は、いかにも作家らしい鋭い批評眼。

《空を飛ぶ夢をもう一度》

ある日、因藤は、中学校時代の親友福田と偶然再会する。ホームレスに身を落とし、重病を患っていた福田は、因藤にある頼みを託す。因藤は、経済的困窮に喘ぎながらも、福田のために、その依頼を果たそうとする……。

幼馴染とはいえ、はたして自分は因藤のような行動がとれるだろうか。そう思うと、内心忸怩たるものがある。

友を想う因藤と母を想う福田の道行きが余りにも凄絶で、本作中、最も重い作品。しかし、重い分だけ心を揺さぶる作品ではある。

《キャンピングカー》

キャンピングカーで妻との温泉巡りを夢見て早期退職に応じた富裕。今どき、そんなベタな計画を喜ぶ妻がいるのだろか、と思っていたら、案の定、妻から軽く拒否される。で、一念発起して挑んだ再就職にも失敗……。

やはり、勘違いのロートルが人生をやり直すのは相当厳しいようだ。

テーマがありきたりで、展開も平凡。少々物足りなさを感じる一作。

 《ペットロス》

冷淡な夫への不満をペットを飼うことで解消しようとする妻淑子。しかし、愛犬のボビーは重い病気を患い、次第に衰弱していく。最初はボビーに冷たかった夫も、やがて看病を手伝うようになり、ボビーが死んだとき、淑子は初めて夫の本心を知る……。

本作中、最も救いのある作品だが、少々男目線すぎるような気がする。女の(生理的)嫌悪感がこういう形で収まるとは到底思えないのだが……。 

《トラベルヘルパー》

元大型トラックの運転手、下総は、若い頃の放蕩が祟って貯えもなく、唯一の楽しみは読書。ある日彼は、行きつけの古書店で上品で美しい女、彩子と出会い、一目で恋に落ちる。彼は彩子をデートに誘い、その後も順調にデートを重ねるが、ある日ついに彼女は自分の秘密を打ち明ける……。

人は年を重ねるごとに、出会いの数より別れの数が増えていき、徐々に孤独になっていく。それが老いの悲しみの際たるものだろう。それだけに老いらくの恋の終わりは、何ともやるせない。下総がトラベルヘルパーとして再起することを願いつつ……読了。