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🔴青の数学 青の数学2/王城夕紀(新潮文庫)4.2点

青の数学 (新潮文庫nex)

青の数学 (新潮文庫nex)

青の数学2: ユークリッド・エクスプローラー (新潮文庫nex)

青の数学2: ユークリッド・エクスプローラー (新潮文庫nex)

【数学は美しいアート】

若さゆえの高ぶる情熱や屈折した想いを数学にぶつける高校生たちを描く青春小説。高みを目指す彼らの潔癖な精神性が強く印象に残る一作。

【あらすじ】 

数学に全てを賭ける高校生栢山(かやま)は、ある雪の日、数学オリンピックを制した天才女子高生、京(かなどめ)香凛と出会う。

京は栢山に問う……『数学って、何?』

栢山はその解を求めるかのように、若き数学者が集うネット上の決闘空間に出入りし、様々な秀才たちと数学バトルを繰り返す。そして、相手を知ることで様々な数学的世界があることを知る。

やがて、栢山の前に現れたのは、全国トップの進学校、偕成高校の数学研究会『オイラー倶楽部』のメンバーたち。彼らと競い合う中で、栢山は更に様々なことを学んでいくが、一方で数学に対する疑問も膨らみ始め、次第に自分を見失っていく。

そして、栢山は、自分の疑問や京の問いに答を出すべく、オイラー倶楽部の最後の牙城、皇(すめらぎ)との数学バトルに臨んでいく……。

【感想・レビュー】

数学をモチーフにした珍しい青春小説。数学に極度のトラウマを抱える身(未だにベクトルの意味すら分からない!)としては、本文中の、ユークリッド幾何学、ポアンカレ予想等の解説や数学の難問のくだりは、当然チンプンカンプンなのだが、ストーリーは、ライバルとのバトルあり、仲間との友情ありの立派な青春小説で、数学オンチでも十分愉しめる内容となっている。 

『数学っ何?』『何のために数学をするの?』という哲学的な(というか禅問答のような)悩みに囚われながら、ひたすらその解を求め続けて、日々難問に向き合う主人公栢山の姿はまさに青春そのもの。その姿に若さゆえの瑞々しさや潔さが感じられて、読んでいてずっと気持ちがいい。

この作品で感心するのは、数字、数式のイメージの見事なまでの言語化。恩田陸が『蜂蜜と遠雷』で音のイメージを言語化したのと同様、この作者は、数字、数式のイメージを言語化し、更には難問を解く際の思考のプロセスや一瞬の閃きまでも実に鮮やかに表現している。また、他の若き天才たちの数学的世界(それぞれの数学のイメージや思考のプロセス)の風景の違いをキメ細かく描き分けている点にも感心する。

そして、印象的なのは、男女関係の自然な描き方。栢山と二人の女生徒との関係を、あくまで互いに好意を匂わせる程度の仲に止め、さらりと描いている点に作者の節度のようなものが感じられて、清々しい印象を残す。

それにしても……よくよく見れば、数学の定理は美しいものだと思う。その端正な数字の配列は、宇宙の原理や法則をこれ以上なく端的に表わしているようにも見える。登場人物の一人が『数学はアート』と述べる気持ちも、何となく分かる気がする。