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🔴ふるさと銀河線 軌道春秋/髙田郁(双葉文庫)4.0点

ふるさと銀河線 軌道春秋 (双葉文庫)

ふるさと銀河線 軌道春秋 (双葉文庫)

【今を生きる人々への優しいエール】

今を懸命に生きる人々の日々の哀歓を、鉄道をモチーフにして綴った9篇の短編集。

どの作品も、ささやかで、奥ゆかしく、切なくて、温かい。結構、好みのテイストではある。

【あらすじ】

多感な少女のささやかな決断を描いた表題作『ふるさと銀河線』を紹介したい(陸別の星空を一度でいいから眺めてみたい!)。

 

舞台は北海道陸別町。中学3年生の星子は5年前両親を交通事故で亡くし、兄と二人暮し。

兄は星子のため郷里の銀河線の運転士となって、郷里に戻る。星子は好きな演劇の世界に未練を残しつつも、地元に残ろうと決意し、隣町の福祉科のある高校を志望する。

夢を断念しようとする星子を見て、兄は心配し、周囲も再三翻意を促すが、星子は考えを変えようとしない。

そんな頑なな星子の心を動かしたのは、東京から陸別に移住してきた銀河の森天文台の技師の言葉だった……。

【感想・レビュー】

リストラ、過疎、老い、アルコール依存、アルツハイマーなど、深刻な(だが他人事でない)社会問題を題材にしているためどの作品も少々重たいが、切なくて、温かく、じんわりとくる味わいの作品ばかり。読んでいて何となく、小椋佳の『愛燦燦』の歌詞が頭に浮かんでくる(自分だけだろうか?)、そんなテイストの物語だと思う。

主人公は様々な老若男女。従って、作品の好みも、読者の性別、年齢等によって違ってくるだろうが、自分のイチオシは『車窓家族』。

車窓から見える仲睦まじい老夫婦の暮らしぶりに古き良き時代の面影が漂って、何とも言えない奥ゆかしさを感じるし、その様子をそっと見守る乗客たちの優しい眼差しや彼らの束の間の交流も心に沁みてくる。

一言で言えば、“人肌の温もり”が感じられる作品。比較的トーンが明るく、シンプルに人の善意が伝わってくるところがいい。 

 

少し脱線するが……先日TVで、都心で子育てをするツバメのニュースを見た。ツバメの巣は洒落た店の軒先にあって、絶えず路上に糞が落下し、時には雛ツバメも落下するらしいのだが、店主や店員たちは、かいがいしく糞の掃除や雛ツバメの世話をして、巣立ちを見守っている、という……。

 

『車窓家族』を読んで、ふと頭をよぎったのは、この店主たちの映像だった。他者のために心を寄せたり、祈ったり……そういった人間の善意ほど美しいものはないと思う。

この世界には“本当に美しいもの”や“本当に善いもの”は、必ず存在する(人の心が荒んでいるのは、そのことを信じられないからだろう)。

世知辛く、生きにくい時代だからこそ、その存在を信じて生きていきたいものだと思う。