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🔴時をとめた少女/ロバート・F・ヤング(ハヤカワ文庫)4.2点

時をとめた少女 (ハヤカワ文庫SF) 

時をとめた少女 (ハヤカワ文庫SF)

【センチな大人のための壮大なお伽噺】

SFの叙情詩人ロバート・F・ヤングによる、大人のためのファンタジー。表題作の『時をとめた少女』ほか6篇を収録。

歓喜、憧憬、悲嘆、憂愁、懐古、感傷……心の底に燻る様々な感情が喚起される名短編集。

【あらすじ】

お気に入りは『わが愛はひとつ』。じんわりとした幸福感に包まれるミラクルストーリー。

舞台は、未来のアメリカ。27歳の政治哲学者フィリップは、村を散策中、“77セント公営夕食会”の会場に偶然立ち寄り、そこに居合わせたミランダと一目で恋に落ち、間もなく二人は結婚する。

しかし、新婚早々、フィリップはいわれなき罪で逮捕され、裁判で100年の人工冬眠の刑を受ける。

100年後、人工冬眠から目覚めたフィリップは、悲嘆にくれながらもミランダの面影を追い求めて、かつて二人が暮らした村へと足を運ぶのだが……。

【感想・レビュー】

どの作品もセンチメンタルでロマンチック。どれ位ロマンチックかと言うと……

『夜明けは桃色の服を着て、内気な少女のように陸地に忍び寄ってきた。その後から、姉の〈朝〉が青い服を着て、胸にきらめく太陽のロケットをつけて、やってきた』(花崗岩の女神)

という一節から察してもらえると思う。

年をとってヤングが好きと言うのは多少気恥ずかしくもあるのだが、心の奥底で未だに燻っている若い頃の“見果てぬ夢”が甦って、曰く言い難い懐かしさに駆られるのだ。

彼の作品は、基本的に(時空を超えた)ボーイ・ミーツ・ガールものが多く、しかも、男の願望が満たされるハッピー・エンドものが多い。登場するヒロインも、大抵、男にとって理想的な女だ。

そういった面に注目すると、予定調和的とかご都合主義的といった批判があるのは当然のような気もするが、巷に、“見果てぬ夢”を昇華できるような小説が意外と少ないのもまた事実であって、そういう希少性が中高年男性を惹き付ける理由の一つなのかもしれない。

また一方で、文明やテクノロジーを批判した『妖精の棲む樹』『赤い小さな学校』、老いの心情を切々と綴る『約束の惑星』などの作品を読むと、ヤングがただの楽天主義者ではないことも理解できる。それはおそらく、絶望を知る者だけが希望を語れるし、悲劇を知る者だけが喜劇を描ける、ということなのだろうと思う。つまるところ、そういう逆説から生まれる“滋味”や“深い味わい”がヤング作品の魅力の正体なのかもしれない(……深読みしすぎだろうか?)。

作品の完成度から言うと『花崗岩の女』がベストのような気がするが、好みは『わが愛はひとつ』と『真鍮の都』。どちらも作品のテイストと読後感が、偏愛する『たんぽぽ娘』にそっくりなところがたまらない。われながら、センチなジジイだなあ、とは思いつつも……。