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🔴湖底のまつり/泡坂妻夫(創元推理文庫)4.3点

湖底のまつり (創元推理文庫)

湖底のまつり (創元推理文庫)

【大人による大人のためのミステリーロマン】

ダム建設に伴って湖底に沈む山里の古色蒼然とした寒村を舞台に、3人の魅惑的な女性が織りな愛と幻想の物語。

作者の冴えわたる職人技に感嘆の一作。

【あらすじ】

傷心を癒やすため東北の山里のとある寒村を訪れた香島紀子は、川で憩っているうち突然の増水に襲われ、流されてしまう。

彼女を濁流から救い出したのは、埴田晃ニと名乗る青年。二人は、一夜を共にするが、その後、晃ニは忽然と姿を消してしまう。

晃ニを忘れられない紀子は、必死に彼の消息を辿るが、村人から、晃ニはひと月前に毒殺された、と聞いて愕然とする。

彼女が出会った埴田晃ニとは、一体何者だったのか……。

【感想・レビュー】

泡坂妻夫の作家としての力量の高さを痛感させられる一作。卓抜な舞台設定、精緻なストーリー、冴えわたる自然描写や心理描写、魅力的な登場人物と、どこをとっても上出来のミステリー。

男女の運命的な出会い、めくるめく一夜、奇妙な村祭り、そして不可解な謎……冒頭から波乱含みの展開についつい引き込まれ、中盤以降は、謎は更に深まって、終始、曖昧模糊とした既視感や霧の中を彷徨っているような幻惑感が付き纏う。そして、思わず“うーむ!”と唸る納得のラスト。恋”より激しい“業”、“運命”より重い“宿命”を感じさせて、深い溜息が漏れる。

まさに作者の筆力の賜物というべき渾身の力作。文学的嗜好性に富んだ作品だけに(丹念で色彩感豊かな自然描写、繊細で情感溢れる心理描写などに作者の優れた作家性がよく表れていると思う)、本格推理(トリック)モノの“やられた感”こそ乏しいものの、幻想と官能のミステリーロマンとして深い印象を残す一作。