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金はないけど暇はあるお気楽年金生活者による映画と本の紹介ブログ

🔴青年のための読書クラブ/桜庭一樹(新潮文庫)4.1点

青年のための読書クラブ (新潮文庫nex)

青年のための読書クラブ (新潮文庫nex)

【立ち昇る文学の香気】

東京の山の手にある名門女子校に連綿と続く異形の集団『読書倶楽部』の部員たちが、それぞれの時代、時代で見聞した学校の裏歴史とも言える5つの秘話を描く連作短編集。

作者の文学的センスが光る一作。

【あらすじ】

『烏丸紅子恋愛事件』

お嬢様女子校に突然出現した異分子、烏丸紅子。読書倶楽部部長の妹尾は、紅子の中性的な美貌に目を付け、彼女を学園のカリスマへと仕立てていく……。

『聖女マリアナ消失事件』

敬虔なカトリック教徒のマリアナは修道女として日本での布教活動を夢見るが、病に倒れた兄の身代わりとなって命を落としてしまう。兄はマリアナに成り代わって日本に渡り、苦労の末に「聖マリアナ学園」を設立する……。

『奇妙な旅人』

良家の子女たちが牛耳る生徒会を改革すべく立ち上がった成金庶民派の子女たち。バブルの申し子とも言える彼女たちは着々と勢力を拡大し、生徒会をほぼ手中に収めるが、良家の子女たちの強烈な巻き返しに遭って、吹き溜まりの読書倶楽部へと追われてしまう……。

『一番星』

元伯爵家の令嬢である山口十五夜は、親友の加藤凛子の裏切りに合ったと思い込み、読書倶楽部から軽音楽部に転身する。十五夜のロックは、多くの生徒の心を捉え、彼女はたちまち学園のスターとなる……。

『ハビトゥス&プラティーク』

教師に没収された私物を、ブーゲンビリアの花を添えて持ち主に返すブーゲンビリアの君と呼ばれる謎の生徒。その正体は読書倶楽部最後の部員五月雨永遠。地味で目立たない永遠は、周囲の余りの熱狂振りに恐れ慄く……。

【感想・レビュー】

ちょっと時代がかった大仰な文体が秘密の花園めいた“お嬢様学校”の雰囲気に不思議と馴染んで、異次元の世界を覗き込んでいるような気分が味わえる一作。

作品中、最も完成度が高いのが『聖女マリアナ消失事件』だろう。物語の舞台となる「聖マリアナ学園」の創設者である敬虔なカトリック教徒マリアナの数奇な半生を描いたこの短編は、パリを舞台にしているだけあって異国情緒に溢れ、繊細で格調高く、フランス文学の芳香さえ漂って来るような逸品。

ただし、他の4篇も物語の面白さという点では負けていない。少女特有の、無邪気さと残酷さ、美への羨望と嫉妬、異物への嫌悪感と好奇心などの表裏一体の感情の揺れが繊細に描かれて興味を唆られるし、何と言っても、彼女たちの考えや行動が可憐で華々しく、一途で爽快。

ラストの読書倶楽部OGの登場も、少女からおばあさんへと駆け抜けたそれぞれの潔い人生が名門女子校の栄枯盛衰の歴史と重なるように偲ばれて、懐かしく、温かい余韻を残す。

『マクベス』『緋文字』『紅はこべ』などの一節を各作品のモチーフにしているところも、多感な文学少女が集う読書倶楽部の雰囲気にピッタリで、作者のセンスの良さが感じられる。

……それにしても、登場人物の名前がどれも乙女チックで可笑しい。つい“宝塚”を連想して、口元が綻んでしまう。