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🔴デフ・ヴォイス/丸山正樹(文春文庫)4.5点

デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫)

デフ・ヴォイス 法廷の手話通訳士 (文春文庫)

これは久々の掘り出し物!(巷ではかなり反響を呼んだらしいが、全く知らなかった)。「心が震える」という言葉がピッタリの感動作。こんな良心的な作品が本屋大賞などにノミネートされると本当に嬉しいのだが……。ちなみに『デフ(Deaf)』とは『ろう者』の意。

本作は、手話通訳士の中年男が、ろう児施設で起きた2つの殺人事件の謎を追ううちに、自分のアイデンティティを取り戻していく様を描いたミステリータッチのヒューマンドラマ。

【 あらすじ】

仕事も家庭も失った中年男荒井尚人は、唯一の特技を活かして手話通訳士となる。同じ頃、ろう児施設の関係者が殺害される事件が発生する。被害者がかつて同じ施設で殺された理事長の息子と知った荒井は、過去の因縁から、2つの事件の関連を調べ始めるが、そこには、あるろう者家族の秘密が隠されていた……。

 

【 感想・レビュー】

初めは、頑なに他人に心を開かない荒井のキャラクターに馴染めなかったのだが、彼が『コーダ(両親ともにろう者である聴こえる子)』であることが明らかになる辺りから、ぐいぐい物語の世界へ引き込まれていく。ミステリー仕立ての物語の面白さもさることながら、ろう者の社会の現状を率直な態度で描いている点がとても潔く、それが読後の清々しい余韻に繋がっているように思われる。マイノリティーの世界をこのように潔く描けるのは、作者の人柄の賜物であろうし(真摯で誠実な人柄が偲ばれる)、そのニュートラルな姿勢、フラットな目線は、人として大切なことを教えてくれているような気がする。

自分とは異なるもの(自分と他者との違い)を理解し、受け容れる……それが対人関係の基本だと思うが、言うは易し行うは難しで、なかなか難しい。それが聴者とろう者の関係であれば尚更のことだろう。本作の場合、コーダである荒井がその架け橋の役割を果たしているが、われわれ一般読者にとっては、本作がその役割を果たしてくれることだろう。

衝撃と感動のラストは必読。『デフ』『コーダ』『日本手話』『日本語対応手話』等々、知識としても得るものが大きい一冊。