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🔴占星術殺人事件/島田荘司(講談社文庫)4.4点

占星術殺人事件 改訂完全版 御手洗潔 (講談社文庫)

占星術殺人事件 改訂完全版 (講談社文庫)

松本清張らの社会派ミステリーが主流だった1980年代に忽然と世に現れた傑作ミステリー。当時は異端扱いされ、ミステリーの進化を逆行させるとまで言われた作品らしいが、様々なサブジャンルのミステリーが乱立する今となっては、そういう評価がいかに偏狭で的外れなものであったかがよく分かる(既成の枠からはみ出した新たな才能の登場は、往々にして年寄り連中の平穏を脅かす……いつの時代でも、どの世界でも、似たようなものだ)。

【あらすじ】

密室のアトリエで殺された画家が遺した手記には、6人の処女の肉体で完璧な女を創る計画が記されていた。その後、彼の6人の娘が失踪し、相次いで死体となって発見される。警察の必死の捜査にもかかわらず、事件は迷宮入りとなる。それから40数年後、事件に興味を抱いた占星術師御手洗潔がその天才的頭脳を駆使して、事件の謎に挑む……。

【感想・レビュー】

本作は、謎解き(犯人探し)の醍醐味を存分に味わえる、本格ミステリーの傑作。冒頭の画家の手記部分は少々読みづらくて手こずる(一度ここで挫折した)が、そこを過ぎると、あとは一気読みの面白さ。何しろトリックがよく出来ている。作者から読者への挑戦状、と謳うだけあって、そのトリックの巧妙さ、大胆さには、ただ感嘆するばかり。この種の驚きは、最近読んだ中では、ジョン・ディクスン・カーの「三つの棺」と鮎川哲也の「達也が嗤う」以来か(鮎川氏は本作を強く擁護したらしい。何となく分かる気がする)。また、本作は、本格推理モノでありながら、西洋の占星術や錬金術、日本の古代史などのモチーフを使って怪奇幻想のテイストを醸し出しているところも魅力。そのおどろおどろしさが、この作品に一層の奥行きをもたらし、興趣をより高めているような気がする。

御手洗と石岡のコンビは、ホームズとワトソンを彷彿とさせるが、御手洗がホームズを散々こき下ろす場面は作者の本音が垣間見えて、思わずニヤリとさせられる。2人のやりとりも軽妙洒脱で面白く、全体的に暗い物語のトーンを随分と和らげている感じがする。

スケール感がありながら、細部に至るまで計算され尽くした、芸術品のようなミステリー。終始大脳が刺激され、読後は頭がスッキリした気分になる一冊。