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🔴大誘拐/天藤真(創元推理文庫)4.6点

大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉 (創元推理文庫)

大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉 (創元推理文庫)

82歳の大金持ちのおばあちゃんが誘拐された。その身代金はなんと100億円!  空前のスケール感、予測できない展開、卓抜なユーモア、存在感のあるキャラクター、そして意外な結末……どれをとっても第一級のエンタメ推理小説。ミステリー通の評価が高い作品とは聞いていたが、まさかこれほどとは……。

【あらすじ】

3度目の刑務所生活に嫌気がさしたスリ師戸並健次は、出所後の社会復帰を固く決意するが、先立つものはカネ。そこで、雑居房で知り合った秋葉正義と三宅平太を仲間に引き入れ、身代金目的の誘拐を計画する。ターゲットは、紀州の山林王の柳川家当主、柳川とし。3人組は周到な準備の末、まんまととしの誘拐に成功するが、その後のツメが甘く、彼らはたちまち窮地に立たされる……。

【感想・レビュー】

とにかく、としばあちゃんが抜群にチャーミング。こんな素敵なおばあちゃんに出くわしたのは、映画「マダムと泥棒/(1955イギリス)」以来かも(マダムは天然ボケ、としばあちゃんは知恵で、悪党たちを手玉に取る。どちらもとぼけた味が可愛らしい)。としばあちゃんのキャラは、作中の表現を借りれば、『獅子の風格と、狐の抜け目のなさと、パンダのような親しさと、兼ね備えた人格』。間抜けな誘拐犯(3人組)が人質のおばあちゃんに助けられ、次第に感化されていく様が珍妙で面白く、特におばあちゃんがドンづまりの3人組に一風変わった隠れ家を提供するところや彼らの身代金の要求額が5000万円と聞いて憤慨するところが何ともユーモラス。そして、最高のクライマックスは 100億円の受け渡しの場面。としばあちゃんを生涯の恩人と慕い、犯人逮捕に執念を燃やす県警本部長井狩と3人組(&助っ人のとしばあちゃん)との息詰まる頭脳戦が本当に見事。

こんなに面白く、愉しめる小説はなかなかない。横溝正史の「獄門島」や中井英夫の「虚無への供物」、夢野久作の「ドグラ・マグラ」などと並ぶ、20世紀ミステリー小説の金字塔とも言える作品。