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🔴こんな映画が、/吉野朔実(河出文庫)4.4点

こんな映画が、―吉野朔実のシネマガイド

こんな映画が、―吉野朔実のシネマガイド

今回はちょっと趣向を変えて、シネマガイド。このジャンルは、古いところでは淀川長治、双葉十三部、最近では内田樹、町山智浩などを時々読んでいるが、この本は読物としての面白さという点で群を抜いている。著者の人柄が滲み出ていて、エッセイとしても楽しめる、稀少なシネマガイドだと思う。

【感想・レビュー】

この本、映画1本につき見開き程度の文章とイラストで構成され、紹介されている映画は100本程度。ジャンルは怪獣映画から文芸作品までと幅広く、チョイスされた作品は、どれも興味をそそられる面白そうなものばかり(知らない作品もいくつかあって、半分位はスルーしているが……)。そのチョイスに「映画に貴賎はない!」という本物の映画愛が感じられ、同時に著者の趣味の良さも感じられて、うーむと唸ってしまう。

 

そして、この著者(本業は漫画家)、文才が凄い。それぞれの作品の魅力や見どころを的確に掬い上げる眼力も大したものだが、それをしっくりくる言葉でビビットに言い表す表現力は、作家と言ってもおかしくないほどの力量が感じられる(「浮き雲」、「ピアノ・レッスン」、「運動靴と赤い金魚」などの作品紹介は、作品の核心をズバリと突いていて、「参りました」という感じ)。また、一目で作品の雰囲気が掴めるイラストが素晴らしい。イラストに添えられたユーモラスなコメントも映画愛に溢れていて、微笑ましく温かい。更に、どの作品にも敬意を払って、腐したり貶したりしていないところも好感が持てる。賢いけれど奥ゆかしい彼女の人柄が偲ばれる(人柄や感性が何となく作家の津村記久子に似ている気がする)。

 

吉野朔実は、自分の感性を信じ、自分の言葉で語る、稀少な才人だと思う。もっと彼女の書いたものを読みたかったのだが、残念ながら、昨年、57歳の若さで亡くなったと聞いている。彼女の冥福を心から祈りたい……。