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🔴こっちへお入り/平安寿子(祥伝社文庫)4.1点

こっちへお入り (祥伝社文庫)

こっちへお入り (祥伝社文庫)

この小説には勢いがある。モチーフが「落語」なだけに、文章の歯切れが良くて、話のテンポもいい。励まされ、元気が出る上、落語にまつわる様々な薀蓄も楽しめて、何だか得した気分の一冊。

【あらすじ】

本作は、彼女33歳独身OLのヒロインがひょんなことから落語に出会い、その奥深さに魅了されて、どんどんのめり込んでいくうちに、何事にも受け身だったそれまでの自分を少しずつ変えていくというストーリー。

【感想・レビュー】

ヒロインが、周囲の人への思いやりとか、何かに夢中になる喜びなど、大切なものを取り戻していく様子が笑いあり涙ありで描かれていて、最後はほっこり癒される。ままならない人生にちょっと気持ちが荒んでいる人たちへの応援歌のような物語だと思う。印象的なのは、ヒロインや落語サークルの仲間たちの落語への熱い想い(女性の向上心と逞しさにはいつもながら恐れ入る)。読む側もその熱に当てられて、古今亭志ん朝や柳家小三治の名調子をつい聞いてみたくなってくる。また、30代独身OLの本音トークも、自虐的で、辛辣で、たまらなく可愛らしくて、とにかく面白い。その中には、人生に対する示唆に富んだ発言もあって、思わずハッとさせられる。以下、作中の印象に残った言葉を幾つか紹介したい。この小説のポジティブなメッセージがよく伝わるのではないかと思う。

『何かをやって得る自己満足は、何もせずに他人を批判することで優位に立とうとするお手軽な自己欺瞞より、何千倍もましではないか?』

『自分のためだけに生きていたら、喜ぶのは自分だけだ。それはもしかしたら、虚しいことなのではないのか?なぜなら、そこにはラブがないからだ。本当の意味のラブは、「ラブラブ」のラブより器が大きい。情けとは、ラブとは、自己愛を超えるものだ』

『人生何か起きるか、わからない。でも、起きる出来事がなんであれ、生きていくのは楽じゃない。楽じゃないから、笑いたいんだ』

『誰もが、自分のバカさ加減に泣かされるんです。その繰り返しが人生じゃないですか』