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金はないけど暇はあるお気楽年金生活者による映画と本の紹介ブログ

🔴みかづき/森絵都(集英社)4.5点

みかづき

みかづき

起伏に富んだストーリーと心震わす珠玉の言葉で物語の醍醐味を堪能させてくれる、森絵都渾身の長編力作。「永遠の出口」や「カラフル」も良かったが、これは文句なしの傑作。王様のブランチの「ブックアワード2016」に輝いたのも十分頷ける。

本作は、昭和から平成にかけての塾業界を舞台に、親子三代の波瀾万丈の日々を描いた感動の物語。

【あらすじ】

放課後の小学校で子供たちの勉強を見ていた用務員の大島吾郎は、在野で理想の教育を実現しようと意気込む赤坂千明に請われて、二人で学習塾を立ち上げる。その後、吾郎は千明と結婚し、学習塾も、ベビーブームと高度成長期の流れに乗って急成長を遂げるが、塾の規模が拡大するにつれ、理想の教育に対する意見の対立が激しくなり、やがて二人の関係は抜き差しならないものになってゆく……(以上はほんのさわりで、これから娘たちの世代、孫たちの世代へと話が進んでゆく)

【感想・レビュー】

本作の醍醐味は、多彩な登場人物の山あり谷ありの半生。……大らかでお人好しの吾郎、気が強く妥協を許さない千明、気立てがよくて家族思いの蕗子(長女)、母親譲りの激しい気性の蘭(二女)、明るくお調子者の菜々美(三女)……どの登場人物も魅力的だ。それぞれ個性は違っても、自分の信じることに一途なところがこの家族の共通点。その一途さ故に度々衝突を繰り返し、各々が深い傷を負うのだが、様々な相剋の後、より固い絆を取り戻せるのも、その一途さ故なのだろう。 

その中でも特に印象に残るのは、祖母の頼子と三姉妹の長女の蕗子。いつも家族一人一人を慈しみの眼差しで見守る頼子の姿に、人間かく老いたし、という理想像を見る思いがする。また、最も祖母似の蕗子が逆境に負けずにしなやかに成長してゆく様子も、とても感銘深い(子供時代の蕗子の健気で可愛いこと!)。

世代交代モノの家族小説の常として、本作でも、年寄りの死と新たな命の誕生が描かれる。死にゆく者に取って代わるような新たな命の誕生は、連綿と続く命の営みを見るようで、救われるというよりむしろ感動を覚える。……余談ではあるが……年寄りの死の意味は、新たに生まれ来る命のために居場所を譲ることなのだと思う。そう考えると、いずれ近いうちに?退場する身としては、少々ホッとする。

本の厚さに尻込みする人もいるかもしれないが、読みだしたら止まらないタイプの本なので、それほど長いとは感じないと思う。心に残る言葉の宝庫のような本でもあり、読後は、いい本を読んだなあ、という満足感にしみじみと浸れる一冊。