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お気楽CINEMA&BOOK天国♪

金はないけど暇はあるお気楽年金生活者による映画と本の紹介ブログ(ネタバレなし)

🔴旅のラゴス/筒井康隆(新潮文庫)4.3点

旅のラゴス (新潮文庫)

旅のラゴス (新潮文庫)

筒井康隆の作品は、ずっと昔に数冊読んだ程度なのではっきりとは言えないが、ブラックジョークとパロディが痛烈で、作風があまり肌に合わない作家という漠然としたイメージが残っている。しかし本作は、そうしたイメージを覆す作品で、物語作家としての彼の並々ならぬ力量を思い知らされた一作。

【あらすじ】

北の地に生まれたラゴスは、先人の遺した知識を求めて、南の地に向けて旅に出る。旅の途中ラゴスは様々な人たちに出逢い、幾多の苦難に遭遇しながら、どうにか目的の地に辿り着く。その地に長く逗留して先人の知恵を極めたラゴスは、故郷への帰還を目指して再び旅に出る……。本作は、学究の徒ラゴスの流浪の半生をドラマチックに描いた、ロマン溢れる物語。

【感想・レビュー】

これは過去の話なのか未来の話なのか……時間と空間が錯綜する摩訶不思議な世界を描きながら、ほとんど違和感を感じさせずに読者を物語の世界に誘導する作家の手腕に感心する。ストーリーも起伏に富んでいて、面白い。ラゴスの旅に付き合っているうちに、次はどんな人と出逢うのか、どんな事件に巻き込まれるのか、といった好奇心が膨らんで、頁を捲る手が止まらない。また、この作家、サービス精神も旺盛のようで、「スカシウマ」「壁抜け」「集団転移」などのファンタジックな仕掛けをふんだんに用意して、読者を愉しませてくれる。そのイマジネーションの豊かさにはつくづく恐れ入る。そして、ラゴスの波乱万丈の半生を彩る女性たちも魅力的(これまた嬉しいサービス精神!)。とりわけ永遠の恋人デーデとのプラトニックな関係は、清冽なリリシズムが漂って深い余韻を残す。

ラゴスの流浪の旅は、永遠の恋人デーデを探す旅であり、自分が何者かを探す旅でもある。そういうロマンの中にさり気なく文明批判を織り交ぜている辺りも、この作家の持ち味と言えるのだろう。

読書の愉しみ方を広げてくれる一冊。