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🔴これからお祈りにいきます/津村記久子(角川文庫)4.3点

 これからお祈りにいきます (角川文庫)

これからお祈りにいきます (角川文庫)

好きな女性作家は?と聞かれたら(……誰も聞いてくれないけど)、迷わず絲山秋子と津村記久子の名を挙げる。絲山秋子はその傑出した文学性に惹かれるし、津村記久子はヒロインに投影された作家の人柄に惹かれる。今回の主役は残念ながら、男子高校生(「サイガサマのウィッカーマン」)と男子大学生(「バイアブランカの地層と少女」)なのだが……。

 

【あらすじ】

【サイガサマのウィッカーマン】

高校生シゲルは、サイガサマという奇妙な神様を祀る風習のある町で、不倫中の父、不登校の弟、無気力な母と暮らしている。彼が密かに憧れる同級生の女の子もまた、似たような境遇だ。ある日、バイト先の都合で、サイガサマの祭りの準備を手伝うことになったシゲルは、サイガサマへの供物について思案する。そして、祭りの当日、シゲルはサイガサマに供物を捧げ、ささやかな願いを託す……。

【感想・レビュー】

大切な誰かのために祈る心の美しさを描いた素敵な作品(「バイアブランカの地層と少女」も同じテーマ)。

津村作品の魅力を語るのはとても難しい。彼女が描く登場人物や彼らの日常があまりにもフツーすぎるからだ(……ちょっとオタクっぽいところはあるけれど)。しかし、そのフツーさに何ともいえない健気さとか愛おしさがあって、彼らを応援せずにはいられない気持ちにさせられるのだ。どんなにツラい毎日でも、他人を羨まず、妬まず、謙虚に生きる彼らの姿に、いつも励まされ、癒される。

津村記久子はいつも自然体だ。彼女の素直な眼は、日常のほんのささいな出来事も見逃さない(大体『コンビニでどら焼きが半額で売っていてうれしかった、とか、洗濯物を干す時に靴下が全部表向きで出てきてラッキーだと思った』なんて感性、他に見たことない!)。彼女の作品は、毎度、たいしたハラハラもなくドキドキもなくワクワクもないのだが、彼女のちょっと控えめな指摘に、人のささやかな想いがこんなにも美しいものだったなんて、とか、平凡で冴えない一日がこんなにもスペクタクルなものだったとは、と再認識させられて、感嘆してしまうのだ。そこに津村記久子を読む愉しみがあると思う。

ありえない話だが、女性作家と結婚すると仮定(妄想)してみる。他の作家だったら何でも見透かされているような気がして、とてもやってられないだろうと思うが、津村記久子だったらフツーに話が弾んで、安らかに過ごせそうな気がするのだが……。津村記久子のカルト的男性ファンの心理は、おそらくそんなものだろう。

改めて津村記久子の魅力に惚れ直した一冊。