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🔴学生との対話/小林秀雄講義(新潮文庫)4.6点

 

学生との対話 (新潮文庫)

学生との対話 (新潮文庫)

 昭和40年代、小林秀雄の著作は、大学の入試問題によく取り上げられたものだ。とても難解で、手も足も出なかったことだけはよく憶えている。

【内容】

本作は、昭和36年から53年にかけて彼が九州各地で行った学生向けの講演と、その際の学生との質疑応答を文字起こしして収録した貴重な一冊。

【感想・レビュー】

この本を読めば、小林秀雄がいかに凄い人物であったかがよく分かる。まさに知の巨人と呼ぶに相応しい人だが、(その思想の深さはもちろんのこと)何より驚くのは、彼の、学ぶことや知ることへのあくなき情熱。その熱い語り口には驚きを超えて感動すら覚えるほどだ。そして、その情熱に応えて次々と鋭い質問を投げかける当時の学生たちもまた、凄い(中には稚拙な質問をする学生もいて、ちょっとホッとするが……しかし、その意気やよし!)。この学生たちも今や60代から80代。小林秀雄の講演に触発された彼らが、その後どんな人生を歩んだのか、大変興味のあるところだが……。

小林秀雄の表現はしばしば逆説的で、こういった対話の形式を採っても、その内容を理解するのは難しいのだが、この本で何より味わうべきは、彼の熱と学生の熱。それを実感できれば十分だと思う。向上心のある人ならば、きっと大きな刺激が得られるだろうし、この本に出会えた幸運に感謝するに違いない。

参考までに本文中印象に残った彼の発言のいくつかを紹介しておきたい。

 

『質問するというのは難しいことです。本当にうまく質問することができたら、もう答えはいらないのです』

『イデオロギーは常に匿名です。責任を取りません。責任を持たない大衆、集団の力は恐ろしいものです』

『対象に対してだんだん一所懸命になり、だんだん愛着を持ち、信仰を持って死んだ人の仕事は……一つの芸術品ですよ』

『本当にいい音楽とか、いい絵とかには、何か非常にやさしい、当たり前なものがあります。真理というものも、ほんとうは大変やさしく、単純なものではないでしょうか』

『精神だって、肉体と同じで、鍛えなければ駄目です。使っていないと、発達などしません』

 

生きること、学ぶことへの示唆に満ちた、刺激的で感動的な対話集。久々に年寄りの血が騒いだ一冊!