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🔴人生のちょっとした煩い/G・ペイリー(文春文庫)4.2点

人生のちょっとした煩い (文春文庫)

人生のちょっとした煩い (文春文庫)

彼女の書いたものは全て自分の手で訳してみたい……。村上春樹にそう言わしめた、アメリカの主婦小説家グレイス・ペイリーの初期短編10篇から成る第一作品集。

【感想・レビュー】

断っておくが、この作品は結構しんどい。主語が分かりにくいし、文と文のつながりも分かりにくい。脱線も多い。かなりクセのある文体で訳者(村上春樹)の苦労が偲ばれる。しかし、この作品にはそのしんどさを補って余りある魅力がある。とにかくユニークで、面白いのだ。

なによりユニークなのは、饒舌な語り口の中にふんだんに盛り込まれた、機知と企みとユーモアに満ちた比喩的表現の数々。一見、頭に浮かんだイメージを殴り書きしたような文章に見えながら、登場人物の人物像や人生模様がくっきりと映し出され、そこに独特の滑稽さとペーソスが漂って、滋味や妙味さえ感じられるのは、そのユニークな比喩的表現の賜物だろう。そこがペイリーの持ち味であり、魅力だろうと思う。その例を二、三紹介しよう。

【比喩表現の紹介】

  • 『俳優の心というのはダイアモンドみたいなものに違いない。面が多くなればなるほど、その名前は光り輝のよ』(さよなら、グッドラック)

 

  • 『男の子ってのは、どこの子もみんなそんなもんだよ。文句ばかり並べたてて、それからどこかへ行ってしまうんだ』(若くても、若くなくても、女性というものは)

 

  • 『適者生存にとってただひとつ本当に必要なものは、どうやら人生への関心であるらしい。それが良きものであれ、悪しきものであれ、風変わりなものであれ』(人生への関心)

 

人生のちょっとした煩い(……かなりやっかいな煩いもあるのだが)をユーモアで語る庶民の、タフで、刺激的で、温かくて、微苦笑の絶えない物語。ペイリーの旺盛な好奇心とシャープな観察眼、そして並々ならぬ表現力に脱帽の一冊。

「チャリング・クロス街 84番地」と同様、本をこよなく愛する人にオススメ。