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お気楽CINEMA&BOOK天国♪

金はないけど暇はあるお気楽年金生活者による映画と本の紹介ブログ(ネタバレなし)

【2016年に出会った凄い本】20作品紹介

今回は、備忘録を兼ねて、昨年読んだ本の中から特にインパクトのあったもの(感動した作品やインスパイアされた作品など)を20作品セレクトし、ランキング形式で紹介します。

「人生の豊かさは、その人が生涯に味わった感動の総量に比例する」(byお気楽年金生活者)

今回紹介する本を通して、見知らぬ誰かと感動を共有できたら嬉しい限りです。 

 

【2016年に出会った凄い本20作品の紹介】

№20

🔴いしゃ先生/あべ美佳

いしゃ先生 (PHP文芸文庫)

いしゃ先生 (PHP文芸文庫)

無医村で働く女医の感動のノンフィクション。

「仕事に貴賤はない。貴いか賎しいかはその人の仕事に対する姿勢や態度で決まる」などの言葉には、実話ならではの説得力がある。主人公の波乱に満ちた生涯を通して、人の生きがいや仕事の意味などを深く考えさせられる一冊。2016年、平山あや主演で映画化。

 

 №19

🔴おちくぼ姫/田辺聖子

おちくぼ姫 (角川文庫)

おちくぼ姫 (角川文庫)

 原典は平安時代の「落窪物語」。イケメン貴公子の右近の少将と清楚で可憐なおちくぼ姫の一途な恋の行方にハラハラドキドキ、ラストのハッピーエンドに気分爽快の日本版シンデレラ・ストーリー。

継母のハンパないいじめに耐え抜いて、めでたく右近の少将をゲットしたおちくぼ姫に、思わず「やったね!」と親指を立てたくなる。おちくぼ姫だけに愛を誓う右近の少将もアッパレ(当時の貴族社会は一夫多妻制)。小学生の時に読んだ「鉢かづき姫」以来50年振りに味わうカタルシス(笑)

……しかし人間ってやつは1000年たってもちっとも変わらんなあ。

 

№18

🔴ユリゴコロ/沼田まほかる

ユリゴコロ (双葉文庫)

ユリゴコロ (双葉文庫)

ある一家で見つかった「ユリゴコロ」と題する4冊のノート……そこに記された禍々しい殺人の記録の真相を描いたサスペンス・ホラー。

この作家、湊かなえ作品に狂気と幻想のスパイスを加えてぐつぐつ煮詰め、更に濃い味にしたような作風。しかし、後味は不思議なほどスッキリしている。それはどんなに救い難い人間の中にも一片の善性を見出だし、それに寄り添おうとする作者の人間愛が作品から滲み出ているからだろう。また、フィクションの作り手としての技量も素晴らしい。

一気読み必至の一冊。

 

 №17

🔴哲学の教科書/中島義道

哲学の教科書 (講談社学術文庫)

哲学の教科書 (講談社学術文庫)

「死」「時間」「存在」「因果」「意志」など哲学上の永遠の課題を徹底的に突き詰めて考察した労作。かなり難解な箇所もあるが、哲学とは何かを理解するには格好の書。

哲学を「何の役にも立たない学問」と断じながらもなお、「なぜ」という疑問から逃れられない哲学者という(余りにも風変わりな)人種の偏執的なこだわりに畏敬の念を覚える一冊。

……しかし、非言語的な観念を言語と論理で解明しようとする西洋哲学には、自ずと限界があるように思えるのだが、どうだろうか(ちなみに禅は、「言語による表現範囲を超えた思想の領域へ、瞑想をもって到達しようとする試み」と理解されている)。

 

№16

🔴算法少女/遠藤寛子

算法少女 (ちくま学芸文庫)

算法少女 (ちくま学芸文庫)

江戸中期に刊行された和算書「算法少女」を基に、算法に魅せられた少女の真っ直ぐな心を描いた児童文学の名作。

健気で思い遣りがあって和算愛に溢れた13歳の天才少女の姿が実に生き生きと描かれている。和算を学ぶ貧しい子供たちの姿がいじらしく、彼女を応援する町民たちの心意気も清々しい。また、和算の歴史や和算の練習問題等の記述から当時の日本人の数学に対する意識やレベルを知ることができ、史料としても興味深い。

児童文学の枠を超えた、優れた教養書と言うべき一冊。

 

№15

🔴羊と鋼の森/宮下奈都

羊と鋼の森

羊と鋼の森

ピアノの調律に魅せられた内気な青年の成長記。

行間から美しいピアノの旋律が聞こえてくるかのよう。言葉にできない音の世界を見事に表現している。理想の音作りを真摯に追求する職人たちの姿も感動的。一途であることは貴いことだと気付かされる一冊。

2016年、本屋大賞受賞作。

 

№14

🔴糸車/宇江佐真理

糸車 (集英社文庫)

糸車 (集英社文庫)

深川の長屋で小間物の行商を始めた元家老の妻お絹と、商いを通じて知り合った様々な人々との切なくも温かい交流を下町情緒たっぷりに描いた人情時代小説。

なによりお絹の健気な佇まいがいい。一途で情け深く、気丈に振る舞いながらも弱くて愚かしい……そんな愛らしい女性像を、この熟練の作家は、ほんのちょっとした言葉遣いや何気ない仕草だけで目に見えるように活写している。

後味も良く、文句なしに楽しめる良質の時代小説。

 

№13

🔴ジョナサンと宇宙クジラ/ロバート・F・ヤング

ジョナサンと宇宙クジラ (ハヤカワ文庫SF)

ジョナサンと宇宙クジラ (ハヤカワ文庫SF)

巨大な知的生命体と出会った青年が真の自分を見出だしていく表題作ほか9篇を収録したSF短編集。

健全で安心。潔癖でセンチメンタル。……そのためか、ヤングには通俗作家のレッテルが貼られているようだが、それは偏見と言うべきだろう。彼の作品に見られる愛と善意は、苦労人ならではの良心や人間愛の発露であって、決してチープなセンチメンタリズムなどではない。

本作は「たんぽぽ娘」と並ぶSFファンタジーの傑作だと思う。

 

№12

🔴すかたん/朝井まかて

すかたん (講談社文庫)

すかたん (講談社文庫)

大阪の老舗青物問屋に女中奉公に出た武家の若後家の奮闘を伸び伸びと描いた時代小説。

少々おっちょこちょいのヒロインとトラブルメーカーの若旦那との恋の成り行きがなんともコミカルで楽しい。商都大阪の自由な風情も物語に生き生きとした開放感をもたらしている。

読後は気分爽快。作家の筆がよく伸びた一作。

 

№11

🔴僕の名はアラム/サローヤン

僕の名はアラム (新潮文庫)

僕の名はアラム (新潮文庫)

再読(昔の邦題は「我が名はアラム」だった)。20世紀初頭のアメリカを舞台にアルメニア系移民の子アラムと彼の一家の牧歌的な生活を、機知に富んだ文体でユーモラスに描いた名作。

悪童アラムの子供らしい冒険が生き生きと描かれていて、微笑ましく、温かい。真面目だが、どこか致命的にズレている少年の叔父(伯父)さんたちのユルさも魅力的。こういう(人間をしっかり捉えた)小説は、幾つになっても面白い。

微笑、苦笑を繰り返すうちに大事なことに気付いてハッとさせられる一冊。

 

№10

🔴方舟は冬の国へ/西澤保彦

方舟は冬の国へ (双葉文庫)

方舟は冬の国へ (双葉文庫)

疑似夫婦、疑似親子が次第に家族になっていく様をミステリータッチで描いた家族小説。

先が全く読めないスリリングな展開と、登場人物(特に栄子とレイナ)の魅力で、物語としての面白さは文句なし。誰でも読み出したら止まらないだろうと思う。そして、ラスト3ページの言葉で表現できないほどの心地よさ。お見事です!

書店員が選んだ、もう一度読みたい文庫家族小説部門第1位に輝いたのも、納得。

 

№9

🔴武士道/新渡戸稲造

武士道 (PHP文庫)

武士道 (PHP文庫)

著者は明治から昭和初期にかけて活躍した教育者。本作は、明治32年(1899年)、滞在中のカリフォルニアで英文で刊行され、その後、各国の言語に翻訳されて世界的反響を呼んだ。アメリカ大統領セオドア・ルーズヴェルトやケネディも愛読したという。

通読してみると、なにより著者の尋常でない学識と洞察力の深さに驚嘆させられる。著者の知識は和漢洋の哲学、思想、宗教全般に及び、その広範な知識を存分に発揮して「武士道とは何か」を極めて科学的、実証的に解明している。

武士道といえば、封建社会の主従関係を中心とした過去の遺物のように思われがちだが、今の時代にも、体面を重んじる風潮や恥の文化が残っている事実は、武士道精神が未だに日本人の倫理道徳規範として機能していることを示している。

急速なグローバル化の中で市場万能主義が拡散し、「損か得か」が価値判断の基準となっている今の時代だからこそ、その価値が再認識されるべき一冊。

 

№8

🔴無私の日本人/磯田道史

無私の日本人 (文春文庫)

無私の日本人 (文春文庫)

江戸中期から末期を生きた無名の偉人たちの生涯を史料に基づいて丹念に掘り起こした渾身の評伝集。

貧困に喘ぐ村を私財を擲って救った商人たち(阿部サダヲ主演で映画化。2016年、全国公開)、富も名声も求めず極貧の中で学問を極めた不世出の儒学者、過酷な運命に翻弄されながらも徹底して他者のために尽くした歌人……それぞれに共通するのは無私の心であり、今の日本人が失いつつある惻隠、献身、謙譲の精神である。

読後は誰もが、この国にこのような偉大な先達がいたことを誇りに思うに違いない。「清貧の思想/中野孝次」を彷彿とさせる感銘深い一冊。

 

№7

🔴さようなら窓/東直子

さようなら窓 (講談社文庫)

さようなら窓 (講談社文庫)

心の不安定な女の子が、恋人との暮らしや父親の看病生活の中で、様々な経験をしながら、少しずつ成長していく物語。

いつも眠れない女の子のために恋人が枕元で語る、少し不思議で胸がぎゅっとなる「おはなし」が秀逸。エンディングの女の子の決心も、切なく胸に響いて感動的。

作者は、ひらがなを多用する文体で、言葉になる前の心の声や作品全体に漂うフワフワした浮遊感を見事に表現しているが、これは詩人ならではの感性の賜物だろう。掘り出し物の一冊。

 

№6

🔴すみれ/青山七恵

すみれ (文春文庫)

すみれ (文春文庫)

37歳のレミさんと突然同居することになった15歳の藍子ちゃん。藍子ちゃんは反発を感じながらも、レミさんのことが心配でたまらない……。

どこか普通ではない女と多感な少女との深く美しい絆を描いた感動作。こんな作品との出会いがあるから読書は止められない。人間や世界に対する鋭く確かな観察力と、観察から得られた現実を言葉に置き換える表現力は見事の一語に尽きる。

作者の作品は、「世界と自分の間合いを間違えた人(=どこにも居場所を見つけられない人)」をモチーフにして人間の美しさや醜さ、人と人との絆などを描いたものが多いが(芥川賞受賞作の「ひとり日和」も同じ)、これは(弱者に対する)作者の人間愛の表れと見ることができる。本作のエンディングにもその人間愛が溢れ出ている。

 

№5

🔴ホセ・ムヒカ〜世界でいちばん貧しい大統領/A・ダンサ、E・トルボヴィッツ

ホセ・ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領 (角川文庫)

ホセ・ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領 (角川文庫)

ネクタイを嫌い、儀式を嫌い、庶民的生活を貫き、国民目線に立ち続ける、元ゲリラ活動家にして無政府主義者のウルグアイ前大統領ホセ・ムヒカの波瀾に満ちた半生を綴った歴史的ルポ。

ゲリラ時代の過酷な体験、獄中生活での膨大な読書、多彩な交友関係、豊富な政治経験等から学んだ深い人生哲学がシンプルに胸を打つ。歯に衣着せぬ物言いの少し偏屈な老人だが、根は無邪気でお茶目で涙脆い。こんなチャーミングな大統領を戴く国民が本当に羨ましい。

人生をよりよく生きるための金言が盛りだくさんの一冊。

 

№4

🔴江戸川乱歩傑作選/江戸川乱歩

江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)

江戸川乱歩傑作選 (新潮文庫)

再読。乱歩の初期を代表する傑作短編集。猟奇、倒錯、偏愛、耽美、怪奇、幻想の極北を巧みに描いて、刺激的。年月を経ても乱歩の魅力は色褪せない。乱歩は隠れた名文家でもある。その精妙な筆致が作品を通俗から芸術へと高めている。

 

№3

🔴世界の果てのこどもたち/中脇初枝

世界の果てのこどもたち

世界の果てのこどもたち

幼い少女たちの過酷な戦争体験を通して戦争の愚かさや人間の尊厳を訴えた反戦小説。

作者のメッセージは作中の次の言葉に収斂される……「わたしはね、死にたくないの。わたしが死んだら、わたしの記憶もみんな消えちゃうでしょう。そうしたらきっとなにもかも、なかったことになる。そうしたらきっと愚かな人間は、同じことをくりかえす。」

読む者に物語の持つ確かな力を信じさせてくれる感涙の一冊。

 

№2

🔴科学するブッダ/佐々木閑

科学するブッダ  犀の角たち (角川ソフィア文庫)

科学するブッダ 犀の角たち (角川ソフィア文庫)

科学と原始仏教の類似点を、偉大な先人たちの遺産(相対性理論、進化論、量子論、仏経典等)から導き出し、将来の両者の一体化の可能性まで示唆した、壮大なスケールの知的冒険の書。

著者は、「科学の発展の歴史はキリスト教支配からの脱却の歴史である」と闊破した上、「神の視点を脱し、人間独自の視点に基づく法則性を構築しつつある科学は、次第に仏教的な世界観に近づいている」と指摘し、「将来、ひょっとすると両者は一体化するのではないか」と予言する。

少し難解だが、頁をめくるたびに未知の世界の扉を開けるようなわくわく感がある。読者の知的好奇心を刺激し、学ぶことの楽しさを教えてくれる感動的名著。

 

№1

🔴ブリギッタ・森の泉/シュティフター

ブリギッタ・森の泉 他1篇 (岩波文庫)

ブリギッタ・森の泉 他1篇 (岩波文庫)

詩人シュテフターの愛をめぐる物語(「荒野の村」「森の泉」「ブリギッタ」)3篇を収録。

どの作品も、何とも言えない安らぎがあって、魂が浄化されるような清らかさに満ちている。ひたすら人間の美しい魂を信じ、自然の中に神の恵みだけを見ようとした詩人の、高貴な精神と敬虔な態度が宿った至高の物語。

これぞ文学、これぞ芸術!シュティフターはオーストリアの詩人、小説家。19世紀前半全ドイツで名声を博した。