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🔴されど、われらが日々ー/柴田翔(文春文庫)4.4点

されどわれらが日々― (文春文庫)

されどわれらが日々― (文春文庫)

この作品を初めて読んだのは大学1年の頃。

丁度オイルショックの激震が日本を襲った頃だったと思う。既に構内には70年安保の熱気はなく、たまに学生集会のために休講になる程度の余熱しかなかった時代に、なぜかこの本だけは一部の学生の間でカルト的人気を博していた。別にそういうブームに乗りたい訳ではなかったが、たまたま、受験した大学の入試問題に本作の一節が用いられ、正答できなかった恨みからリベンジのつもりで手にした本だったと記憶している。

【内容】

本作は、共産主義革命に絶望した青年たちの深く静かな挫折感、虚無感、諦観を克明に描きつつ、そうした絶望の底に沈殿する若者や絶望の淵から新たな一歩を踏み出そうする若者の姿を精緻な文体で描いた青春文学の記念碑的作品で、60〜70年代の安保世代の若者たちからバイブルとして支持された作品。

【感想・レビュー】

見方によっては「インテリ臭のつきまとう嫌味な私小説」に見えながら、これだけ長く支持されてきた理由は、この作品が「人はどう生きるべきか」という普遍的な問いかけに真摯に向き合っていることと、この作品を通底する一貫した抒情性にあると思われる(そこが安保世代の懐古趣味をくすぐったのだろう)。実際、これだけ論理的な文体とセンチメンタルな表現を両立できる作家はそうざらにはいないだろう(何となく梶井基次郎の作風に似た印象は受けるが)。

再読後、一番に感じたのは今の若者が読んだらどう感じるだろうかということ。混沌の60〜70年代が生み出した異様な熱気や興奮、退廃や厭世感を知らない今の若者に果たして通用する小説なのかどうか知りたいし、できれば通用する小説であってほしいと願っている。

なぜなら、どんなに時代が変わろうとも、自分の内面と真剣に向き合い、自分の生き方について悩み、苦しみ、もがくのは若者の特権と信じているからだ。深く内省することもなく、目の前の現実とあっさり折り合いがつけられる要領のいい若者ばかりでは寂しくて仕方がない。

今の10代、20代に是非とも読んでもらいたい一冊。そして皆で語り合ってもらいたい一冊。