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お気楽CINEMA&BOOK天国♪

金はないけど暇はあるお気楽年金生活者による映画と本の紹介ブログ(ネタバレなし)

🔵SPY(スパイ)/(2015アメリカ)4.1点

CINEMA(スパイ映画)

SPY/スパイ [Blu-ray]

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たまにはこんな映画もいい。メチャクチャおバカなB級アクションコメディだが、とにかく笑えて愉しめる。出演陣もなかなか豪華。テンションを上げたいとき、気分転換したいときにオススメ。

 

CIAで働くスーザンは、憧れのエージェント、ファインの目となり耳となって現場を誘導する分析官。ある日、ファインは、核爆弾の売買を阻止する任務を遂行中、武器商人、レイナの罠にはまって殺されてしまう。愛するパートナーを失ったスーザンは、レイナへの復讐を誓い、現場のエージェントに志願する。ド素人エージェント、スーザンは、ズッコケエージェント、リックとともに、レイナと核爆弾の入手を目論む組織の行方を追う……。

 

スーザン役のメリッサ・マッカーシーの魅力全開の映画。その豊満ボディ(やや豊満を上回っているような気もするが……)から繰り出されるハードなアクションの数々が見もの。この体でよくこんな動きが出来るもんだと素直に感心する。ピンチになればなるほど勢いを増すジョークは多少キワドイものもあるが、彼女の口から出るとクスクス笑えるし、ファインとのデートで見せる乙女の恥じらいもキュート。とても愛嬌のある女優だ。ジェイソン・ステイサムもこれまでのイメージをかなぐり捨てて、ドジなエージェント役に徹している。こういう世話の焼ける男の役も結構似合っているかも。更にこれにジュード・ロウが加わるのだから、何ともムダに贅沢な映画。スーザンの親友ナンシー役のミランダ・ハートの突き抜けた感じもいい。スーザンと彼女のイタい凸凹コンビの熱い友情と「負け犬の遠吠え」的開き直りは、観ていて爽快。 

エンタメに徹したエンタメ映画。やっぱりこういう映画はハリウッドならでは。こんなに面白いのに何で日本で劇場公開されなかったのだろう。

🔴夜行/森見登美彦(小学館)4.3点

BOOK(ホラー)

   夜行

夜行 

深い井戸の底を覗き込むような不気味なテイストのホラー小説。これまでの作品とは全く趣きの異なる、作者の新境地を示す作品と言えるが、不気味な中にもどことなく甘美な香りが漂うあたりは、いかにも森見作品という感じがする。

 

10年前の夜、鞍馬の火祭を見物に出かけた英会話スクールの6人の仲間たち。そのうちの1人、長谷川という美しい女学生が、その夜、突然姿を消した……そして10年後の火祭の夜、彼女に導かれるように5人は再会する。貴船の宿でくつろぐ5人はそれぞれ旅先で出くわした奇妙な体験談を語り始めるが、それはどれも銅版画家岸田道生の連作「夜行」にまつわる話だった……。

 

大筋は、銅版画「夜行」を見たことをきっかけに悪夢(夜、死、闇といった言葉に置き換えてもいいだろう)の世界に誘われる5人の恐怖体験を描いた物語と言えそうだが、一口に悪夢と言っていいのかどうかはよく分からない。物語が進行するにつれ、時間と空間が奇妙にねじれて、夢の世界と現実の世界の境界がいつの間にか曖昧になっているからだ。読者は、そのどちらともつかない世界に翻弄され、迷宮を彷徨っているかのような錯覚に襲われる。そして、次第に夜の魔力に支配されつつある不確かな自分に気づいて、ドキリとさせられる(『世界はつねに夜なのよ』という長谷川の言葉が何とも衝撃的だ)。

岸田と長谷川は実在するのか、長谷川はどこに消えたのか、「夜行」に描かれた顔のない女のモデルは長谷川なのか、5人の体験は何を表しているのか、夜の世界に囚われたのは長谷川か大橋か……全てが曖昧なままで、最後まで答が分からない。しかし、その曖昧さがこの物語をより一層不気味なものにしているのは間違いない(本作の成功の要因はその点にあるような気がする)。ただ、この物語、若さ故の儚い感傷や一筋の光が差し込むラストに救われて、後味は不思議と悪くない。作者のそのあたりのバランス感覚は絶妙だと思う。

これまでの森見作品については(数冊読んだ程度でおこがましいが)、インテリのわざとらしいおフザケが鼻につく感じがして、正直、あまり好きになれなかったのだが、これは全く別物という気がする。洗練された上質のホラーで、完成度が高く、彼の真の実力を見せつけた傑作だと思う。

🔵ビューティー・インサイド/(2015 韓国)4.0点

CINEMA (恋愛映画)

ビューティー・インサイド [Blu-ray]

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毎日、容姿が変わる恋人??……いかにも韓国映画らしい奇抜な設定のラブストーリーだが、中身は至って真面目な作品。ツッコミどころもなくはないが、恋人たちの哀歓を繊細かつ丁寧に描いているところが好印象。

 

家具デザイナーのウジンは18歳のときから、日々、容姿が変わるという特異体質になる。朝、目覚めると、老若男女、はては外国人まで様々な人間に変わってしまうことから、普通の暮らしが出来ず、ネットを使って生計を立てている。そんなウジンが家具専門店で働く美しい女性、イスに恋をした。ウジンは、若いイケメンの姿になった日にイスに声をかける。イスとのデートを続けるため3日間徹夜したウジンだが、うっかり電車で寝入ってしまい、目覚めたらハゲ頭の中年男の姿に……しかし、どうしてもイスを諦めきれないウジンは、ある日、若い女性の姿のままイスに会いに行く……。

 

イスを演じるハン・ヒョジュの清楚な美しさが光る一作(彼女を眺めているだけであっという間の127分!)。「日々容姿が変わる男?を愛してしまった女」という、かなり無理筋のシュチエーションにそれほど違和感なく入り込めるのは、彼女の美しさと演技力にそれだけの説得力があるからだろう。将来が見えない恋愛へのイスの葛藤や苦悩、刹那の歓びなどが、そのときどきの表情からひしひしと伝わって、否応なく切ない気持ちにさせられるのだ(彼女の愁いを帯びた表情は本当に魅力的。キレイな歯並びがのぞく笑顔も素敵だが)

ウジンからプロポーズされたイスは、薬に頼るほど悩み苦しんだ末に、答を出す。それは、「愛するのは人の容姿か心か」という本作のテーマに対する答でもある。

また、本作で興味を惹くのは、「世間体」という問題(いかにもアジア的)。これも本作のテーマの一つなのかもしれない。いつも違った男と連れ立って歩くイスへの世間の中傷、ウジンのことを父や姉に打ち明けられないイスの後ろめたさ……そんなイスの苦しみが情緒的によく分かるからこそ、ラストの感動も格別なのだろう。

ウジンとイスの関係だけでなく、二人の親子、姉妹、友人関係を丁寧に描いているところも評価できる。これらの関係を疎かにしないことによって、この映画のリアリティが格段に増しているような気がする。

ユニークなアプローチで恋愛の本質に迫った一作。ハン・ヒョジュが光っているだけに、上野樹里の役柄はちょっと残念……。

 

🔴大誘拐/天藤真(創元推理文庫)4.6点

BOOK (ミステリー)

大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉 (創元推理文庫)

大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉 (創元推理文庫)

82歳の大金持ちのおばあちゃんが誘拐された。その身代金はなんと100億円!  空前のスケール感、予測できない展開、卓抜なユーモア、存在感のあるキャラクター、そして意外な結末……どれをとっても第一級のエンタメ推理小説。ミステリー通の評価が高い作品とは聞いていたが、まさかこれほどとは……。

 

3度目の刑務所生活に嫌気がさしたスリ師戸並健次は、出所後の社会復帰を固く決意するが、先立つものはカネ。そこで、雑居房で知り合った秋葉正義と三宅平太を仲間に引き入れ、身代金目的の誘拐を計画する。ターゲットは、紀州の山林王の柳川家当主、柳川とし。3人組は周到な準備の末、まんまととしの誘拐に成功するが、その後のツメが甘く、彼らはたちまち窮地に立たされる……。

 

とにかく、としばあちゃんが抜群にチャーミング。こんな素敵なおばあちゃんに出くわしたのは、映画「マダムと泥棒/(1955イギリス)」以来かも(マダムは天然ボケ、としばあちゃんは知恵で、悪党たちを手玉に取る。どちらもとぼけた味が可愛らしい)。としばあちゃんのキャラは、作中の表現を借りれば、『獅子の風格と、狐の抜け目のなさと、パンダのような親しさと、兼ね備えた人格』。間抜けな誘拐犯(3人組)が人質のおばあちゃんに助けられ、次第に感化されていく様が珍妙で面白く、特におばあちゃんがドンづまりの3人組に一風変わった隠れ家を提供するところや彼らの身代金の要求額が5000万円と聞いて憤慨するところが何ともユーモラス。そして、最高のクライマックスは 100億円の受け渡しの場面。としばあちゃんを生涯の恩人と慕い、犯人逮捕に執念を燃やす県警本部長井狩と3人組(&助っ人のとしばあちゃん)との息詰まる頭脳戦が本当に見事。

こんなに面白く、愉しめる小説はなかなかない。横溝正史の「獄門島」や中井英夫の「虚無への供物」、夢野久作の「ドグラ・マグラ」などと並ぶ、20世紀ミステリー小説の金字塔とも言える作品。

 

🔵パンズ・ラビリンス/(2006メキシコ,スペイン,アメリカ)4.1点

CINEMA(SF・ファンタジー)

パンズ・ラビリンス [Blu-ray]

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この世界観は映像でしか表現できないだろう。その意味ではいかにも映画らしい映画。内容が想像以上にダークなので、受けつけない人もいるかもしれないが、映画としての完成度は高く、個人的には好みの映画。竹中直人が激賞していたが、何となく分かる気がする。

 

物語の背景は、スペイン内戦の影響が尾を引く1944年のフランコ独裁政権下のスペイン。政府軍と反乱軍の戦闘が続く暗黒時代に生を受けた少女オフィリアは、内戦で父を亡くし、身重の母とともに、母の再婚相手の政府軍の大尉と山奥の要塞で暮らし始めるが、現実はつらく悲しいことばかり。そんなとき、オフィリアは、妖精の化身である虫たちに導かれて、暗い森の中にある迷宮の王国の入口に立つ。彼女を見た王国の番人パンは、彼女を王女の生まれ変わりだと言い、王国に戻るための3つの試練を与えるのだが……。

 

物語は、政府軍と反乱軍の熾烈な戦闘が続く現実世界と、オフィリアが創り出した?妖精や魔物たちが棲む幻想世界が交錯しながら、不気味に展開していく。この映画の最大の魅力は、そのストーリー性の豊かさと圧巻の映像美だろう。一見、空想好きの少女の現実逃避の物語のように見えながら、そう単純な話でもない。現実世界に残った幻想世界の痕跡や大尉の時計の秘密などの凝った趣向が観る者のイマジネーションを喚起して、興趣が尽きないし、現実と幻想の間を生きつ戻りつする展開も、何ら違和感を感じない。そのあたりは本当によく出来ていると思う。また、物語のダークな世界観を貫く映像美も圧巻で、グロテスクとしか言いようのない妖精や魔物でさえ、ある種の神秘性を帯びて見えてくるから不思議だ(ただ、大蛙は気持ち悪かった……)。

俳優の中では、無慈悲で残忍な大尉を演じたセルジ・ロペスの印象が強烈。戦争はこんな化け物を産み落とすのか、と震撼させる迫真の演技で、その存在感はこのファンタジーにより一層ダークなリアリティを与えている。

ラストの結末に希望を見るか落胆するかは人それぞれだろう。この映画は一言で言えば、大人のための残酷な童話。アンデルセンの「マッチ売りの少女」のような詩的な美しさのある寓話と言ったら言い過ぎだろうか。

 

🔴こんな映画が、/吉野朔実(河出文庫)4.4点

BOOK(教養書)

こんな映画が、―吉野朔実のシネマガイド

こんな映画が、―吉野朔実のシネマガイド

今回はちょっと趣向を変えて、シネマガイド。このジャンルは、古いところでは淀川長治、双葉十三部、最近では内田樹、町山智浩などを時々読んでいるが、この本は読物としての面白さという点で群を抜いている。著者の人柄が滲み出ていて、エッセイとしても楽しめる、稀少なシネマガイドだと思う。

この本、映画1本につき見開き程度の文章とイラストで構成され、紹介されている映画は100本程度。ジャンルは怪獣映画から文芸作品までと幅広く、チョイスされた作品は、どれも興味をそそられる面白そうなものばかり(知らない作品もいくつかあって、半分位はスルーしているが……)。そのチョイスに「映画に貴賎はない!」という本物の映画愛が感じられ、同時に著者の趣味の良さも感じられて、うーむと唸ってしまう。

そして、この著者(本業は漫画家)、文才が凄い。それぞれの作品の魅力や見どころを的確に掬い上げる眼力も大したものだが、それをしっくりくる言葉でビビットに言い表す表現力は、作家と言ってもおかしくないほどの力量が感じられる(「浮き雲」、「ピアノ・レッスン」、「運動靴と赤い金魚」などの作品紹介は、作品の核心をズバリと突いていて、「参りました」という感じ)。また、一目で作品の雰囲気が掴めるイラストが素晴らしい。イラストに添えられたユーモラスなコメントも映画愛に溢れていて、微笑ましく温かい。更に、どの作品にも敬意を払って、腐したり貶したりしていないところも好感が持てる。賢いけれど奥ゆかしい彼女の人柄が偲ばれる(人柄や感性が何となく作家の津村記久子に似ている気がする)。

吉野朔実は、自分の感性を信じ、自分の言葉で語る、稀少な才人だと思う。もっと彼女の書いたものを読みたかったのだが、残念ながら、昨年、57歳の若さで亡くなったと聞いている。彼女の冥福を心から祈りたい……。

🔵34丁目の奇跡/(1994アメリカ)4.3点

CINEMA(ファミリー映画)

34丁目の奇跡 [Blu-ray]

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1947年の「三十四丁目の奇蹟」のリメイク版。夢があって愛があって、とても上質なクリスマス・ムービー。ストーリーに意外性と説得力があって、大人でも十分愉しめる(……ちょっとナメてたかも)。これは愛すべき映画。次はオリジナル版も観てみたい。

 

落ち目のデパート、コールズのクリスマス商戦のイベントで、突然サンタ役に穴が空いたことから、イベント担当のキャリアウーマン、ドリーは、たまたま出会った謎の老人クリスを代役としてスカウトする。自分を本物のサンタと言うクリスは一躍人気者になるが、ドリーと愛娘のスーザンはサンタの存在を信じない。そんなある日、クリスの人気ぶりに業を煮やしたコールズのライバル店の陰謀によって、クリスは逮捕されてしまう。そして、クリスが只の気の触れた老人なのか、それとも本物のサンタなのかを争う裁判が始まるのだが……。

 

一見ファンタジー風の映画だが、トナカイが空を飛んだり、サンタが魔法を使ったりするシーンはない。サンタが裁判の被告人になるという前代未聞のピンチのシーンでも、一発逆転の行動はない。「サンタじゃなくて只のホラ吹きじいさんかい!」とツッコミたくなるところだが、この映画のミソは、サンタをスーパーヒーローとしてではなく、ちょっと変わってはいるがごくフツーの老人として描いているところにある。肝心なのは、サンタが起こす奇跡なのではなく、人々の「夢を信じる心」なのだ。サンタは夢を信じる人の心の中にいる。そんな(夢を信じる)人たちがサンタを救うシーンは、ささやかな奇跡を見ているようで、思わずウルッときてしまう。

この映画、サンタ役のリチャード・アッテンボローがなんともいい味だ(まさにハマリ役!)。包容力のある温かい人柄が演技に滲み出ていて、「このじいちゃん、いい歳の取り方をしてるなあ」としみじみ感じ入ってしまう(彼もまたイギリス紳士。その辺の俳優とは風格が違う)。スーザン役のマラ・ウィルソンもおマセでとてもキュート。最後までサンタの存在に懐疑的なドリーに『ママは完全に間違ってます!』 と一喝するシーンなどは、胸がすく思いがする(ドリー役のエリザベス・パーキンスは本当にキレイ。確か「ビッグ」でトム・ハンクスと共演してたような……)。

夢を信じる心が奇跡を起こす……そんなメッセージが込められた、ピュアでハートフルな映画。是非、家族団欒で観てほしい作品。